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あのあと、大丈夫だと言って白馬の家からこの部屋に帰ってきた。
この4日間、ただ学校と部屋の往復をして、渕埼さんの容態を見に行く訳でもなく。
そして、私は思考を放棄した。
律を忘れたのではなくて、ただ目の前の人を助けたに過ぎないと自分に言い聞かせて。
その意識が途切れると、途端に自分の胸の内を問いただしてしまうから。
リビングのカーテンを開ける。
月光が部屋に浸みていく。
月は、上弦・・・。
もしあの時、私にも戦う能力があれば、律は死ななかったかも知れない。
あの時私は世界結界に護られて、何も知らなかった。
その為に律は死んでしまった。
あの日からこの一年の間、律の影を追うことで何とか歩いてきた。
その腕は掴めなくても、私はそれを追って生きてきた。
それは言い換えれば律に生かされて来たと言う事。
今、私が律以外の人に向いてしまったら、それは律への裏切りになるのではないか。
今まで生かされた恩を忘れて他の誰かの腕を掴む事は、律という存在を消してしまう事と同じではないのか・・・。
伸ばした腕の先に、彼の姿が浮かぶ。
旋さんの部屋で出逢い。
土蜘蛛戦争で決意を見て。
光庭で誕生日を祝った。
黙示録や依頼で同じ場所で戦い、
学校祭を共に楽しんだ。
苦い思いをした事もあったけれど、それ以上に心が満たされる事もあった。
・・・私は彼を受け入れようとしているのだろうか。
しかしそれを認める事は足場を無くす様で出来ず。
忘れようとして思い出す度に、気持ちが、満ちゆく月の様に膨らんでいく。
けれど、これ以上彼への気持ちを膨らませていく訳には行かない。
私は、律の花嫁。
いつかの花嫁の様に、違う誰かとの幸せを手にする訳には行かない。
一足早く逝ってしまった律に、これ以上寂しい想いをさせてはいけないのだから。