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(株)トミーウォーカーのPBW【シルバーレイン】に参加してるキャラクターが書き散らし気味に展開中。
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 私を想ってくれているのだからと思っても、自分にそう言い聞かせていることに気づくと、急に嘘っぱちに見えてくるから不思議だ。
触れている時にだけ何かが繋がっている気になっているのを感じて、溝が深くなっている気がしていたのは私だけではないのかも知れないと、ぼんやり思った。

 どうして私たちは変わらずにいられないのだろう。
海はいつもと変わらずそこにあるのに。


「そうなった心当たりとか あるかしら? 風邪とか…精神的なストレスとか」

誰にも会わないようにと向かった光庭で深都貴さんとぶつかり、なし崩し的に声が出ないことを知られてしまった。
今思いついて逃げ込むところは光庭しかなく自分の世界の狭さを図らずとも思い知ることになったのだが、私にとって重大な事情を知られたのが彼女であったことは不幸中の幸いとしか言いようがない。
結局彼女の馴染みの喫茶店へ案内されて、迷いながらも事情を話すことになったのだった。
逆光に格子窓が黒く浮かび強い日差しも高い気温も遠くに感じるほど、空間に流れるのは落ち着いた彼女の声と紙の上をペンが滑る音だけで、この隔離された部屋に奇妙な安らぎを感じていた。
グラスの氷が角をなくし、緑茶の中でカラリと音を立てた。

「ねぇ、センパイ そうね一昨日、何か悩んだりしなかったかしら? 悪い夢を見たとか」

夢見が悪かっただけで声が出なくなることはないが、昨日休む間際まで考えていた事と言えば彼と自分のことで、もし声が出なくなった原因があるとすればそれしかないだろうとぼんやり気づいていた。
口外はしないと言った彼女が約束を違えるとは思ってはいないのだがこの悩みのようなものにおいて彼が占める割合は多く、自分のことよりも彼のことを口に出すことが躊躇われた。

「もし、絶対に関係ないと言い切れるなら、聞かないわ」

でももしかしたらと思うなら聞かせて欲しいと言う彼女は年下ながらに頼りがいのあるように見えたし、実際今の私には他に頼るところもなく、たっぷり逡巡してから話をすることに決めた。
ルーズリーフに『彼の』と書きだしてから、『自分の』気持ちを考えていたと書き直した。
人をすべて肯定などできないのだから自分を責めることはないと言われても、私以外に誰が彼を肯定すると言うのか。
私の知る限りでは彼が誰かに積極的に悩みを相談する節はなかったし、依頼を終えると必ずと言って良いほどに割り切れない気持ちを抱えて戻ってくる。
何かあるたびに心置きなく話せるような空気を作って、話を聴いては間違っていなかったとその想いひいては彼自身を肯定するのは私の役割だった。
確かに最初はそれで良かったのだろう。けれど、それが段々と形式じみてきているような気がして、作業的な対応をする自分が不誠実に感じた。

「センパイに対して不満を持っていても、それはイコール不誠実ではないのよ
そして、不満を解消する為に私に相談するのも手段の一つだと思うわ」

彼の何かに明確な不満などは持っていなかった。寧ろ自分の思いのとおりに出来ないことがあることに不満を持ち始めていることが一番の不誠実だと思っていた。
そしてこんなことを思っていても相談するには彼のことまでも話さねば状況の説明も出来ず、自ら話さない彼のことを私が話すわけにはいかないと完全に袋小路に入っているのも自覚していた。
慣れない筆談と言うのを言い訳に詳しく話すことを避けたが、それに気づいても優しい彼女は解決に手を貸してくれるらしい。
このままでは卒業旅行から帰ってきてすぐにこの状況が知れてしまうこともわかっていたから、彼女の申し出に甘えることにした。

そして話は淀みなく進み、しばらく白馬の家でゆっくりすることになった。
久しぶりの家と、久しぶりの義母との時間。ゆったりとすごす心の片隅で、恐らく難しい顔をして帰ってくるであろう彼にどう言い訳するかを考えていた。

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