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姫と寅靖には当日の護衛を。
奈都貴には手回しを。
下花乃宮の若き当主には、乗り込む正当性を。
全ての準備が整ったとき、深都貴の携帯に風羽からの電話。
郵送で返せば良いという言葉を遮って、直接届けると言って電話を切った。
全ては明日。
風間さんの車にみんなを乗せて、俺は自分の車で京都へ向かう。
枝籠君が逗留している旅館に入りすぐに打ち合わせたが、宗主殿に騒ぎを起こす事を伝え、花乃宮の門をくぐった時には夕方になっていた。
奈都貴と枝籠君には宗主殿のところへ向かいつつ気を引いてもらい、俺は凶と一緒に目星をつけておいた離れに向かう。
「直前の報告で 深っちょんが離れに連れて行かれたねん」
珍しく焦った様子で凶が言う。
「この騒ぎだ
離れで大声出しても気づかれないと思うぜ」
風羽が何か早まった事をするのではと、嫌な予感が頭をよぎる。
つい早まる足を落ち着かせて、慎重に障子越しの室内を探る。
中のやり取りを止めるようにわざと障子を開け放ち、深都貴の携帯を差し出す。
「・・・携帯お届けにあがりましたよ、風羽さん」
「白馬の後継…無粋だな」
「無粋で結構・・・っ」
振り返る風羽の横っ面を携帯を握った手で殴り飛ばし、転がっている隙に背中に深都貴を庇う。
あの時忍ばせたネクタイピンを握り締めて少し震えている深都貴に、ジャケットを羽織らせて凶に預ける。
邪魔をされた風羽は頭に血が上っているらしく、壁にかかっている刀を取った。
何度かの応酬をして、何とか落とす事に成功したものの、ネクタイの下半分はなくなっていた。
転びそうになりながら駆け寄る深都貴を抱きとめると安心したのか、発熱している身体から力が抜ける。
「目を閉じたら 夢になっちゃいそう…ね」
「起きてもちゃんと居るから・・・今は休むんだ」
「旋やん そのまま車まで行こうや」
確かにこの騒ぎでは屋敷内で深都貴を休ませるどころではなく、後の処理を右腕に任せて俺は車に乗り込んだ。
今はさっさと家に帰って、ゆっくり休もう。
深都貴が自分の意思で俺のところに戻ってきたことを噛み締めながら、鎌倉へ車を走らせた。