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そんな状況でも自分の立場を忘れる事は出来ず、足元固めに時間が過ぎていく。
俺の腕はただ長いだけで、肝心な時に役に立たない。
講義は偽身符に任せ登録済みのBCに出たものの、チーム内で最初に戦線離脱。
御車と凶と奈都貴に頼んだ情報戦の結果が気になって集中できないなんて、冷静になりきれて居ない証拠だ。
イライラと落ち着かないが、今は手札が揃うのを待たなければいけない。
いつもどおりに淹れようとしたコーヒーは、分量を間違えて苦かった。
「今回は全然でしたよぉ~」
「・・・まあ、誰でも調子の悪い時くらいあるからな」
ちらりと向けられる視線ごときで、イラッとする。
深都貴の姿が見えない事に気がついた寅靖と言い争いになり掛けた時、由桜が盆で視線を遮った。
苛立ちは苦いコーヒーの所為だと日本茶を淹れて配りなおし、事情を話せと言う。
「一人でウジウジ考えて、結果が出ないで勝手に苛立ってるよりはマシなんじゃないですか?
もしかしたら、どうにかなるかもしれないでしょ?」
「うじうじ考えてる訳ではないし、出来る対処は取っている
それでもイライラしてんのはコーヒーを日本茶に入れなおして、会話するようなラグが出るからだ」
「…ただひたすら、結果が出るのを待つって事ですか?」
「今はな・・・やる事は解ってんだ
最も効果的なタイミングでかちこむには、情報と後ろ盾が必要だ」
手助けが必要ならば呼ぶと2人に言う頃には、大分気持ちが解れているのを自覚していた。
俺には今友が居るが、深都貴には誰も居ないのだと思うと複雑だったが。
春に下花乃宮の幼い当主に案内された深都貴の自室。
小物入れにこっそり紛れ込ませてきた、香水付きのネクタイピン。
抱きしめられない腕の代わりに、俺の香りがアイツを護るように。
もう少し、もう少しだから・・・。