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前 後
幽霊船への突入日時を知らされてすぐに、寅靖の呼びかけで鈴蘭亭に人が集まる。
光庭の面子と鈴蘭亭の面子を合わせた連合チーム。
攻撃面では劣るが回復力の厚さは引けを取らないようなものに組みあがり、俺たちは動きを詰めていく。
自ら敵に突っ込む事はせずに、周囲へのフォローを主目的として、無理はしない。
俺たちの目的は・・・生き残る事。
円の中心にはヒーリングヴォイス部隊。
外に行くに従って近接戦闘の得意な面子を配置し、急ぐことなく取りこぼしのないように進んで行く。
俺は回復を厚くする為中心で支援をし、この面子の中では力の強い者に入るアヤコは寅靖の隣で歌っている。
それが少し歯痒い気もしたが、奴を信頼して自分のするべき事に集中する。
アヤコを護る為にも、奴を倒れさせる訳にはいかないのだから。
力不足を気にしていた深都貴も中盤からの攻撃を中心に戦っていて、俺なんかよりも余程戦力になっている。
ゴーストの数が減り、少し余裕の出来た視界には見知った連中が映る。
玖凪たちカフェの奴らも、危なげなく亡者どもを屠って行く。
流茶野は寅靖と言葉を交わしたあと、手摺を器用に駆け上がり群れの中に飛び込む。
包囲が狭まらないと言う事は、きっちり倒しているのだろう。
チームの前線は回復の範囲に留まって戦っているはずだが、一人それを外れる奴が目に入った。
今回鈴蘭亭から参加した紅乃だ。
チームの動きを気にする様子もなく、好きに動いては力押しな戦い方をしている。
良く見てみれば、踊りながら得物を振るっているらしい。
後ろに纏めたピンクゴールドの髪は2本の細い線を描き、両手のスパナがリズムを取るように光を反射する。
その軽快な動きに反して、何も映していない虚ろな表情。
目に入ったゴーストを端から潰しているだけなのだろう。
ゴーストの攻撃を食らっても表情一つ変えず踊り続ける。
俺にしてみればその様は、異様だ。
一人で先に行ってしまいそうになると、凶が声をかけ引き戻す。
がら空きの背中にゴーストが迫ると、辰巳が攻撃する。
囲まれそうになると、寅靖が数を減らす。
作戦前からの知り合いの動きを見ていると、あいつの動きがいつもどおりなんだと言う事が窺い知れる。
しかし、ギリギリな雰囲気を纏い踊る姿に、他を見る余裕はない。
今の紅乃が周囲のフォローに気づくことはないだろう。
あいつは視線の先に何を見ているのか。
紅乃のスパナが、またひとつ同じような目をした屍を潰した。