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その日は風が強かった。
雲がとても速く流れて、徐々に青空を隠していく。
雨はまだ降りそうもないが、それも時間の問題だろう。
「あー・・・」
後ろから強風に吹かれて、髪はぐちゃぐちゃ。
俺とした事が櫛を忘れてくるなんて、ついてない。
足は光庭に向かう。
この天気だ。
あいつらはきっと居ないだろう。
案の定、居たのは深都貴だけだった。
「それにしても 見事に逆立ってるけど、外 風まだ酷いのね」
貸してもらった鏡と櫛で髪を整えてる間に、インスタントコーヒーを淹れてもらう。
紅茶セットはあるが、コーヒーを淹れる道具は今の光庭にはない。
買うならカンパするという深都貴の提案に乗る形で、買いに行くことを決めた。
「紅茶と珈琲なら、私も珈琲の方が好みね」
「・・・コーヒー党結成できそうじゃね?」
ふと口をついた言葉に、愉快そうに乗ってくる。
「じゃあ 旋センパイは党首ね、詳しいし」
そう言って笑う仕草に微笑み返すのも束の間、稲光が俺たちを照らした。
深都貴の口から悲鳴が上がる。どうやら雷が駄目らしい。
ついに降り出した雨。
自宅からの迎えを待ちながら深都貴を抱き寄せ、安心させるように背中を叩く。
腕の中、誰にも言わないでと必死に言う様子が、可愛らしくて。
けれどそんな事を言ったら機嫌を損ねるのは間違いなく、俺は苦笑しながら口を閉ざした。
運転手から連絡が入る。
深都貴の分も荷物を持ち、その手を引いて車に迎える。
雨は走る車を激しく打ちつけたが、家の前につく頃にはすっかり上がっていた。
既に落ち着きを取り戻した深都貴を送り届けて、改めて後部座席に身を沈める。
思考はもう、休日のプランを練っている。
久しぶりに休日が楽しみになってきた。