(株)トミーウォーカーのPBW【シルバーレイン】に参加してるキャラクターが書き散らし気味に展開中。
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「あのね空ちゃん・・・」
神妙な言い方をするテルを、わたしは眺めるしか出来なかった。
誕生日に渡されたものとは違う箱に詰められた弁当を、いつもどおり口に運びながらテルを見やる。
「いつか、立派な料理人になって、聖雪ちゃんみたいにお店を作るんだ」
少し遅れて理解が来る。
テルは卒業後の話をしているんだろう、と。
「その時は・・・」
テルの言葉はそこで止まり、部屋の中が静かになる。
学園と言う組織から卒業なんて、考えてなかった。
わたしからこの能力を取り去ったら何も残らない。
日向には馴染めない役立たずが、一人出来上がるだけだ。
テルがどんな気持ちで卒業を選んだのか、わたしには全然わからないし、テルなりの考えがあってのことだろうと考えられても、きっと本当の意味で理解は出来ていない。
「・・・武器より包丁の方が似合ってんじゃない?」
思い浮かんだ言葉をそのまま口に出して、残りのおかずを飲み込む。
「うん・・・そうだね
ありがとう」
何かを堪えてるような表情で笑う。
わたしはこの先も、その何かを知ることはないだろう。
これが最後の気がして食べ終わったものを綺麗にまとめて渡す。
「ごちそうさま」
おそまつさまといつもどおりに言うテルの手が、少し震えているように見えたのは気の所為か。
わたしにとってテルは日向そのもので、直視することは出来なかった。
それはきっと、今も、この先も変わらない。
わたしたちの間には決定的な溝がある。
「ありがとう――大好きだよ、空ちゃん」
そう言って部屋を出て行ったテルを背中で見送る。
台所には誕生日プレゼントの弁当箱がぽつんと取り残されていた。
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