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甲板のゴーストが一掃され、船内では戦いの音が響く。
チームの中で大きな怪我をされた方はなく、無事を確かめて胸を撫で下ろす。
亡者と踊り続けた空さんは、錆付いた手摺に身体を預け天を見上げていた。
作戦が終了し船内のゴーストが倒され、新しいメガリスも手に入った。
私たちを乗せてきた船は港に戻り、私たちはまたいつもの場所に戻る。
土蜘蛛屋敷への突入の時、何か力になりたくて、空さんを通じてとあるチームに入った。
あの時の空さんは戦いに対して軽いのりではあったけれど、周囲の様子を見ようとしていたし、実際そう動いていたと思う。
今回はあの時よりも強い力を振るっていた事は間違いない。
でも、あんなに心此処に在らずな戦い方をするような方だっただろうか。
作戦が終了して帰還する時も、何処かぼうっとしたまま。
見ているようで何も見ていない瞳に、ただ天を映していた。
「・・・何か、あったのでしょうか」
「あいつが抱えているものは、俺にも正直見当がつかん。
・・・ただ、一つだけはっきりしていることがある。
あいつは自ら深みに嵌って、しかも這い上がろうとは考えていない。
本人に意思が無い以上、手を差し伸べるにも限界があるということだ」
けれど、その場所に居る時には、中々上を見ることはできない。
春先までの私がそうだったように。
自分の存在を確かめる事に精一杯で、それ以外の事は何も考えられない。
でもあの時の私と違って、空さんは今何も考えたくないのかも知れない。
「・・・辰巳さんは、きっともっと歯痒いんでしょうね」
頷く寅靖さんにも、苦々しい表情が浮かぶ。
全ては憶測で、確かめる術もないけれど、心配ではあった。
重くなる空気を断ち切るように席を離れ、お茶を淹れる。
リビングに戻ると、寅靖さんがソファに肘をついて転寝をしていた。
チームは作戦通りに動いて居たけれど、責任感からくる疲れは免れない。
ブランケットをかけて、寝顔を見る。
もし空さんに助けを求められたのなら、すぐに助けに行こう。
でも今は皆が、寅靖さんが、無事に帰って来られた事を噛み締めたい。
この寝顔を再び見られた事に、喜びと感謝を・・・。